君のためにできること
ドラッグの受け渡しは、警察に特定されないようにいろいろな所で行われた。

時には駅のロッカーだったり、マックだったり喫茶店だったり。

刑事ドラマみたいな港の倉庫や廃工場なんてのは大口の取引に使われるそうだがめったに行わない。実際のところ足が付きやすいからなのだろう。

大抵はえらく端的なやり取りになる。その代わりその頻度は多かった。
取引の相手はだいたい、中国人。スーツやアロハシャツみたいなもの着てるもんかと思ったけど相手も場に溶け込むことが大切なことだと理解していた。取引相手はその場に合わせたものを纏っていた。

取引と言っても僕はただドラッグを受け取るだけだった。
小口なやり取りの積み重ねにはある程度の信頼関係が必要なのだそうだ。金を指定口座に振り込んだのちドラッグの受け渡しを行う。

警察の取り締まりが厳しくなった今、取引相手を騙して利益を得ることは得策ではない。
双方で利害が一致している今、口座への振込みでの取引が主流と成りえていた。

とは言ったものの、完全に警察の取り締まりから逃れられる訳ではない。
だから捨てゴマであるこの僕が駆り出されたんだ。
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