君のためにできること
光条との話というのうはオーバーで光条はただ単に取引を行う場所のメモを手渡すのみだった。他のキャストの前でそう言うのは、たんにそれが面白いだけだからであろう。

「…じゃぁ…よろしく。」

またあのするどい瞳で睨みつけられながらそう言う。
僕は、うなずくことしかできなかった。

「あ…お前、客にバレてないだろうな…?」

僕は、気持ち悪い汗を掻いた。もう既にゆうこさんにバレていたからだ。

「…実は…ゆうこさんは…知っています…」

「何!?…お前…あれほどばれるなって言っただろ!」

光条は声を荒げて言うと、店を閉める準備をしている他のキャストが一斉にこちらを向く。

「すみません…でも…其の時手に入れた30万があの金だったんです。」

「何故言わなかった?」

「すみません…余計なことを言ったら…受け取れないと思ったからです…」

「ふざけるな!確かあいつは、雑誌の出版社の編集長だろ。あいつに何か書かれてみろ…こんな店一発でおしまいなんだからな!」

苛立ちからか、光条はタバコを一本取り出して吸い出す。

「いいか!絶対ゆうこから目を離すなよ。お前があいつを掴んでいれば広がらずに済む。」

「わかりました…」

僕はうなずくしかなかった…ゆうこさんの裏切りが僕を破滅へと導くからだ。
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