君のためにできること
“ねぇ…萌華…聞こえるかい…”
「……」
萌華は、呆然と亡骸ただただ見つめていた。
“やっぱりもう…聞こえないのかい…”
亡骸は、眠るように横たわっている。
“ねぇ…萌華…これまでに話してきた物語は、まさに君と僕のストーリーなんだよ。僕の全てを語ったつもりだ…君に嫌われてしまうのではないかと思って話ことが辛かったんだ…”
「……」
君は、亡骸の胸にそっと顔をつけ静かに涙していた。
“ねぇ…萌香…やっぱり君に聞こえないのは哀しい…”
「うぅぅぅ…タケル…」
君は亡骸に縋りつきながら、声にならない声をあげた。
“ねぇ…萌香…僕はここにいるよ…お願いだ…僕を見てよ…僕を…この僕をいつものように愛しておくれ…”
君とずっと一緒にいるのに…これじゃ、離れていることと何ら変わらないじゃないか…離れることがこれほど辛いことかと気付かないふりしてずっと君の傍にいた。手が届くのに届かない…そのジレンマにずっと悩まされてきた。
僕が消えてから泣き続けた君がとてもとても心配だった。でも…僕の声も届かない、君に触れることさえ出来ないこの状態に僕は耐えることができずについには、君を見守ることを放棄し、僕は君から離れた。
僕はあれほど君から無償なる愛を受けとっていたのにまだその愛が理解できない。
それでも尚、君からの愛情を欲する自分が愚かに思い、自らを愚弄する。
僕にはもちろん行くあてもなく、ただただ彷徨った…