君のためにできること
僕は、不思議に思った。カフェの店員が全く僕を無視して。何度も手を上げて呼んでも僕の所にこないんだ。でも僕の腕に付けた腕時計が割れて壊れているの見て初めて気が付いた。とても滑稽な自分が急に恥かしくなるのだがそれよりももっと大切なことにやっと気が付いたんだ。

記憶を少し遡ると次々と蘇る記憶…まるで走馬灯のような…いや…これが走馬灯と言うものなのだろう…


青色の車。


鳴り響くブレーキ音。

全身を貫く激しい衝撃。

反対側の歩道を歩く白いワンピースを纏った君。



…時計の秒針が左廻りに進みゆく頃、僕はやっと理解した。

視界に映るのは青と白の世界…まるで子どもがクレヨンで描いたようだ。とても穏やかで澄んだこの世界が今の僕の全て。呆れるくらいに美しい…
そう思いながらも、薄れゆく記憶の中で君の名を叫んだことを思い返した。
< 133 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop