君のためにできること
そう…



―――僕は死んだーーー



何もかも悟った僕は、もう一人の僕が横たわるのをただただ見つめていた。
その隣で僕を必死に揺さぶる君。

幽霊なんて信じてなかった。僕は死んだら無に還るんだと思っていた。
不思議なものだ。自分には自分の姿が見えているのに…僕以外の人には見えてないのか…



あれから、僕は死んだあの街角にずっと佇んでいた。君の姿ずっと探していた。

君の家を訪ねればよいだろう、君が通う大学に足を運べばいいじゃないか…

そう思っていたはずなのに…この場所を離れることができない。君の後ろ姿に似ている人をみかけて追いかけたりもしたことがあったけどちがってた…

不思議だね…

もう躰はないのに…そんなふうに君のことを想うと胸が痛むんだ。
しかしついにあの場所で君をみつけた。

君は僕の知らない男と寄り添って歩いてた。
そのときの君のとびきりの笑顔をみて僕がもつ感情に気づいたんだ。
僕が死んでからどのくらいの月日が流れたのであろうか…
君の愛を理解するのに幾分か時間を要したよ

やっと気付くことができたんだ。


信頼という言葉すらねじ伏せてしまうほどの愛について…



少し大人になった君はもっと素敵に笑っていた。
幸せになっているんだね。僕はきっとその満面の笑顔がみたかったんだ…
だからいつまでも此処に留まっていたのだろう。


もう二度と…君は泣かないで…
笑顔を見せて…
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