君のためにできること
「おまたせ、華蓮。」
その頃にはお互いを華蓮と岳とで呼び合っていた。
「おっそいよ岳!もう10時回ってるじゃん!」
「しかたないっしょ!授業が長引くんだもん。」
春頃と変わらず僕は確実に彼女の尻に轢かれていた。
「わかってんの?岳の初ライブ来週に迫ってるんだからね!」
「わかってるよ。だからこうやって10時にもなって愛する彼女に会いにきてるんじゃん」
「キモッ!おだてたって無駄だからね。」
「照れちゃって、カワイイんだから。」
「ハイハイ…そんで実際どうなの、ベース?初ってこともあるから今回は3曲にしたんだからね。」
僕はそのころにはストレートに彼女に思いを伝えられるようになったが、いまいちその気持ちは彼女には伝わってなかった。
彼女は呆れた顔してベースの進捗について問いかけてきた。