君のためにできること


「えっ、2曲じゃないの…?」


「あたりまえでしょー!もう時間がないんだってー!」


僕は焦った。最後の一曲はまだ完璧にできていなかったからだ。
不安になったまま演奏にはいる。アンプなどは用意できないので音源に合わせて、ベースを奏でる。

その不安があだとなったのかミスをした。この前は2曲とも今回は3曲とも。


「…今日もやっちゃったか…」


彼女には冗談交じりで伝えたが、本当に眠い目をこすりながらコードを憶えて腕が痺れるほど練習していた。
そんな僕の心を察してか、彼女からは想像していた罵倒ではなく激励の言葉がでてきた。


「勝負は勝負だからおごってもらうけど、大きなミスはなかったよ。だから自信もってやれよな!」

ふいに背中を思い切りたたかれて僕は驚いたが、彼女からの思いもよらない言葉であの時の僕はすこし目頭が熱くなっていた。


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