君のためにできること
その時の僕は彼女が鳥のようなこだと思っていた。
ほおっておいたらどこかに飛んでいってしまうような気がして。
それほど彼女からは自由を貪欲に求めているように感じていた。
「よぅ、ヒヨッコ!今回はしっかりできるんだろーな?」
須藤さんは僕のことをヒヨッコと呼んでいた。
初めてベースを披露した時、緊張してたこともあってまだ全然引けないレベルではあったがそれにも増して全くできなかったから。
ついたあだ名がヒヨッコ。
彼女の知り合いのひとは彼女を筆頭にどうしてこうも人を落ち込ませるようなことを言う人ばかりなんだろうとかなり歎いていた。
「だ…大丈夫です。今回はかなり練習してきたんで。」
僕は不安そうな顔をしながらそう答えた。
「なんだよ、その不安そうな顔は。頼むぜヒヨッコ、当日まであと一週間しかないんだぞ。音合わせは今日が最後。後は当日の直前しかないんだからな。しっかりしろよー」
須藤さんは僕にプレッシャーを与えてくる。