君のためにできること
防音されているドアを開けると同時に須藤さんは僕たちに言った。

さりげなく、僕のことを’タケル’とちゃんと名前で呼んでいた。それに僕はちょっぴり感動を覚えた。

ステージに登場するなり、大きな歓声で僕たちを迎えてくれる観客たち。そしてその観客の中には見慣れた顔があった。僕は、彼女に内緒で学校のクラスの連中を呼んでいた。男女数名、僕たちの演奏を見にやってきたのだ。
それに気付いた彼女は驚いて僕をみる。そんな彼女に僕は満面の笑顔で答えた。

友達たちの歓声が聞こえてくる。彼らも驚いているようだった。まさか普段ふだん笑顔もみせず、誰とも関わらないで過ごす彼女がこんなにも輝いているなんて思いもしなかったようだ。

みんなが彼女の名前をさけんでいた。準備をし終わった僕はもう一度彼女をみると、彼女は満面の笑みでその声援に答えていた。

そして僕たちの演奏が須藤さんのドラムの合図で始まる--


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