君のためにできること
第三章
東京都青山学院大学。
都心の立地を活かした学術研究や文化創造の情報発信型キャンパスとして、学院の伝統を受け継ぎながら常に最先端の教育環境づくりを続けている。都心にありながら緑あふれるキャンパスでもある。田舎暮らしの僕が唯一この学校に惹かれた点はそこだけだった。
テニスという選択肢を失い、音楽という楽しみも失い。僕は、ただなんとなく自分の頭のレベルに合わせたこの青山学院を受験して合格した。
大学へ進学するに伴い僕は東京で一人暮らしを始めた。心配していた両親からも幾分か仕送りがあり僕はバイト漬けという毎日でもなかった。だからといって勉学に励むのでもなく僕はただひたすらに遊んでいた。
酒にタバコに女。
僕自身もあの彼女がしていたことをし始めていた。特定の恋人を作らずにただ互いの躰を、快楽を求めるセックスフレンドとして女性を求めていた。
大学に進学して慣れ始めた一年の夏。僕は完璧に表の自分を作りあげていた。卑怯で残酷な本当の自分を隠す為に作られた人格。その人格でフルコーティングして僕は渋谷のクラブに通い始めたんだ。
クラブで声をかけて誘ったら大抵の女は誘いに乗ってきた。まるで彼女の影を追うように僕は、すぐに躰を求めた。彼女がしていたように。ラブホに直行する時もあれば、クラブのトイレでそのまましてしまう時もあった。刺激がもっとほしかった時は外でした時も。
そしてセックスをしている最中でも僕は相手ではなく彼女を思い返していた。