君のためにできること
「…にしても岳は恋しないの?」

恭介は真顔になって話しかけてきた。

「…ぷっハハ…なんだよ恭介。恋とか言うなよ。いきなり…」

真顔でそう言う恭介に僕は吹いてしまった。

「たまにはいいだろ。こういう話も」

「恋ねぇーなんか面倒になっちゃってさ…」

僕は高校時代のことを脳裏で思い返していた。付き合ってもすぐに別れてしまう。こんな僕に恋愛をする資格などあるのだろうか。

「恭介は…してんのか?」

「ぜーんぜん…どっかにイイ女落ちてねぇーかなぁー…」
恭介は両腕を上げて首を横に振った。

「おいおい…落ちてるもんじゃねーだろ…」

「教えてよ…どーやったらお前みたいに女が群がるんだよ?」

「知らん!…向こうがかってにくるんだよ。」

「はぁ~これぞ親を怨む瞬間だよ…たくぅー…」

「あはは…」

教えられることなんて何一つなかった。僕こそ教えてほしかった。
堕落しきった高校生活を経て、僕は恋愛をするのが怖くなってしまったんだ。付き合ってきた女性のことを好きになろうとして、その結果別れる。
この頃の僕は、恋愛で傷つくことに恐怖していた。好きになっても別れが来る。傷つくだけならはじめから恋なんてしなければいい。

あの頃の僕はそう思っていた。

< 59 / 135 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop