君のためにできること
第四章
冬の夕日は一段と早くその身を潜める。

僕もあの時は沈む太陽と一緒に身を潜めたかった。闇夜を照らす一筋の光をはなつ月。
僕はそんな月と君を重ねていた。月のような君から僕は太陽のように逃げたいとさえ思った。

萌香…僕はあの日…君と出逢うことが出来たのに…あの出来事があったからなのか、もう一生君と会えないとさえ思っていた。最低なことをしてしまったからね。
ただ、この出来事があったからこそ、君のことを生涯忘れることはないだろうと思った。
君はきっと知らなかっただろう。

いつもの渋谷のクラブで。僕は遠目から君を見ていた。それは君がこの場所に全く似合わなかったからだ。表情からも読み取れた。笑っていたけどどこか寂しげな目をしていた。

そんな君だったから僕はいつもなら簡単に声をかけていたけれど、声をかけることができなかった。
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