君のためにできること
「実はさ…話かける前から君のこと気になってたんだ。なんか浮かない顔してるなぁって思ってさぁ」
君は一瞬、その浮かない顔をしたけど、すぐさま笑顔に戻っていう。
「私…こういうところ初めてで、普段こういう音楽って聞かないし、なんか自分でも場違いかなって思っちゃってたのかな。」
「じゃぁ、なんで来ようと思ったの?」
「朱里も言ってたでしょ?…気晴らしのためかな…」
そう言う君はまた少し暗い表情になったが続けて言う。
「いろいろなところに行ってみたりやってみたいって想いもあったかな。私ね、子どもの頃からずっとピアノを習っていて音楽もクラシック系の曲ばかり聴いていたの。」
「へぇーそうなんだ。クラシックかぁーなんか君に似合ってる気がするよ。僕はベース弾けるよ。今でも慣らし程度に奏でたりしてるんだ。」
「そうなの?音楽の種類は違うかもしれないけど、音を奏でる点は一緒だね。」
満面の笑みで言う君を見ながら僕は中学生の頃のあの彼女の顔を思い出したんだ。
不思議だね。君と彼女はまるで正反対なのに何故か君の笑顔は彼女にどことなく似ているんだ。
「そうだね。君のピアノ聞いてみたいな。ずっとやってるんならすごく上手いんだろうな。」
「ありがと。最近ちょっとサボり気味で上手く弾けないかもしれないかな。」
「…そうなんだ。落ち込んでることと何か関係あるの?」
僕は、言い終わった後、しまったと思った。君は、除叙にまた浮かない顔に戻っていったね。でももう、引くことはできないと思った僕は暴走しはじめた。
「もし嫌じゃなければ聞かせてくれないかな。僕でよければ力になるよ。」
最悪だった。どんどん話さなければいけない雰囲気を作ってしまっている。そんな僕に君は話したくもない話をしてしまったね。