君のためにできること
彼女は本当に女性らしいスタイルになっていた。
最後に抱いたあの躯から著しく成長していた。その女性らしいスタイルとは変わり、服装は黒のライダースジャケットにパンツにブーツ。全身黒で揃えていた、髪は初めて彼女と会ったあの時と同じような真っ赤でショートボブだった。あの日、渋谷の大画面でみた彼女、そのままの姿だった。僕はそんな彼女についつい見とれてしまった。

「よっ!久しぶり!さすが岳、イケメンになったじゃん」

僕がなんて声をかけようか迷っていた矢先、彼女はまるで、会うのがほんの数ヶ月ぶりみたいなようすで声をかけてきた。実際は5年ぶり位なのだが…

「よっ」

そんな彼女に僕はぎこちなくそう返事をした。

「ほんと久しぶりだね、元気してた?」

「ああ、華蓮のことはほんと最近知ったんだ。あれ…あの曲【ブルーローズ】って曲を渋谷のスクランブルで初めて聴いて知ったんだ。夢、本当に叶えたんだね。おめでとう。」

「アレでデビューしたからなぁー…まぁーまだまだだよ。これからもっともっと売れるバンドになるんだ。」

「実際すごいよ。華蓮は。学校のダチにすげーファンがいるんだ。」

僕は素直に彼女を褒めた、そこには尊敬という想いのみ込めて言ったんだ。
「そっかぁー…岳は今学生かぁー」

彼女は、かけていたサングラスを上げた。
「今年…2年。とりあえずはまだ遊んでばっかだな。来年は先のこと考えんのかぁー」

あの時は今の華蓮と自分を比較してしまいとても言いづらかったな。


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