君のためにできること
「まだ先の話じゃん。何になりたいとかあるの?」

「…情けない話だけど、ないんだよな。無難なとこに就職するようになるのかな。今の時代それすらも難しいかもしれないな。」

「そっか…」

彼女は、つまらなそうな話になると思い軽く聞き流し、少し汗をかき始めたコーラにストローを射して一口、口にした。コーラを注文するところもあの頃と変わっていない。

「それで…突然どうしたの?」

僕は自分から連絡をとったことにも関わらず、彼女にそう尋ねてしまった。

「突然って…前にメールもらってたじゃん」

「前って…だいぶ前だぞ。」

「そーだっけ?まぁ細かいことはいいの。懐かしいって思って会おうと思ったんだよ。」

「いいのかよ…有名人がこんな喫茶店で?」

今更だが僕は周りを気にしだして、小声で彼女に呟いた。

「大丈夫だよ。まだコアなファンしかいないし…バレないバレない。」

「ほんとうに大丈夫なのかよ」

「まぁーもしバレたとしても、そんなの岳が気にしないでいいよ。」

「気にするっつーの」

彼女は笑っていた。その笑顔は中学生の頃のままだった。

「でもここまでくるのに、だいぶ苦労したんだよ。岳と会わなくなってからすぐかな…やっぱり東京に行かないと大きくなれないと思って、上京してきたの。でも全然お金なかったから…」

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