君のためにできること

ねぇ…萌香…。

君はきっとおかしいと言うだろう。

僕はね、セックスよりむしろキスのほうを大切にしたいと思っているんだ。
きっとね、口づけだけでエクスタシーを感じる動物って人間だけだと思う。

一番人間に近い猿でさえ口づけだけでは何も感じないらしい。
逆に言うと性交渉は、犬でさえ発情し大いに腰を振る。

ただあの時の僕からしたらこの事象はただのいいわけにしかならなかった。

僕は、彼女とバーへ行ったのち、彼女の自宅に行って彼女を抱いたんだ。君と交わることができずにいた寂しい想いを彼女で晴らしたんだ。キスをしなかったと言う事実だけで正当化しようとしていた。

彼女との躰の相性はまるでパズルのピースのように重なり合っていた。ずっと彼女のことを忘れられなかっただけのことはあると感じた。

僕たちは、逢えなかった時間を埋めるように何度も何度も抱き合い、単純に互いの性欲のみを求める激しいセックスを繰り返していた。


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