君のためにできること
ねぇ萌香…

僕は才能には2種類あると思うんだ。
一つは真の才能とも言うべきか、引き出してもまた再び湧き上がってくる無限の可能性を秘めた才能。

そしてもう一つは努力によって得ることができる才能。

前者は、持って生まれた才能。ごく稀で希薄。しかし後者は、違う。死に物狂いで努力して得た才能。皮肉なことにこの後者の才能は、やがて枯渇してなくなってしまう。

彼女はね、残念ながら後者の才能だったんだ。才能が枯渇してしまったら最後。今までできていたことが想うようにできない…その苦しみは正に暗い闇の中を彷徨い歩くと同じくらい寂しく、そしてとても恐ろしいことなんだと思う。

すなわち彼女は曲が浮かばなくなってしまっていたんだ。曲ができない焦りとストレスで眠ることもできずに、分量も弁えずにドラッグを服用していた。

僕と会えなかったのは僕が君と会わなかった理由とほぼ一緒で、こんな姿を見せたくなかったからであろう。でもそれも限界を超え僕を呼び出したんだ。


僕はこんな姿の彼女をみたくはなかった。
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