君のためにできること
彼女が死んだ―――
ねぇ、萌香。
自由って何なのかな?彼女が想う自由って何だったんだろう。
子どもの頃からの夢を掴んでいた彼女でさえも満足していなかった。君にも夢ってあるんだよね。君はこんなにまでもなって夢を追いかけていた彼女のことはどう思う?
その後の彼女の事務所の対応は、手慣れていたものだった。それは彼女の行為を全て黙認していることを意味付けていた。僕をすんなり彼女の自宅まで迎え入れることも、彼女がドラッグを服用していたことも。そして、僕と彼女の関係の後始末すらも…
彼女が所属する事務所は、ドラッグを服用していたことを世論に伏せ、もみ消した。皮肉になってしまうのが辛いことなのだが、そうなったことで、彼女は芸能界という大きな巣から自由に飛んで行けたのかもしれない。
実際、彼女の死が世論に大々的に発表され、より多くのメディアに出回った。彼女が死んでから、インディーズ時代の未発表曲などがヒットし、生前よりましてブームを引き起こしたんだ。今では、伝説とまでなって多くのファンを掴んだのだから。
僕も薬物濫用の罪があるがその事実を口外しないことを条件にその場所に僕は居なかったことにされた。実際のところその方が事務所サイドからも都合がいいのだ。
こうして事務所はこの事実を完璧に闇に葬り去った。
しかし既にドラッグの猛威に侵されていた僕には、包帯代わりであった彼女すら失い、まさに失意のどん底に突き落とされてしまったんだ。
僕の本当の地獄はここから始る。