鋭い抱擁


ここは学校から近い場所だけど、さっき鳴った5時間目の授業開始を知らせるチャイム以外何も聞こえない。

本当に静かだ。

「おいでよ、真美。」


"真美"はおいでよ、と言われたらすぐに駆け寄ったのだろうか。いや、きっと行ったに違いない。

あんなに優しい声に呼ばれたら、思わず駆け寄りたくなる。私にもわかる。


でも、そうしてしまうと本当に自分を見失ってしまいそう。自分を保てなくなりそう。

怖かった。

あまりにも暖かくて。


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