鋭い抱擁

「へぇ。まぁトンカツ定食には負けるけどね。あ、今日一緒に帰ろう。」

「え?」

突然すぎる、家はまずい。表札を見られたら終わりだ。何とかごまかすしかないか…でも…

「たまには男らしいこと、しないとね。真美はいつも1人で帰ってるんだろ?」

「うん。1人でも平気だし、楽だから。」

「でもつまらないじゃないか。1人は楽だけど、つまらない。」


図星。


「決まりだからね。」

優しくも強引な陽に、心臓は過敏に反応する。

パーマが少しとれた髪は柔らかさを増したのか、扇風機の弱々しい風にも動かされている。

なんだか私みたい。




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