鋭い抱擁
「ふぁ〜あ。ごめんね。さ、帰ろうか。」
放課後、陽が大あくびをしながら待ち合わせ場所の通用門に来た。
正門は嫌い。登下校時のあの賑やかさは異常だ。でも通用門は地味なところにあるから、人気がいつも少ない。
「俺3年なのに通用門初めて来たよ。マイナーだね、真美は。」
どうしよう。私の家は絶対に"真美"が住んでたとこじゃない。それに苗字も絶対違う。もし玄関にお母さんがいたら…どうしよう。
「真美。」
しまった。後ろから声が聞こえたから振り返ると、陽が不服そうに私を見ていた。
「早いよ。口もきかないし。ほら、もう。」
陽は怒りながらも、私の手を握った。男の人に手を握られたのは、小学生以来だ。鼓動が加速する。体温が上昇する。これはこれで、どうしよう。
「真美は俺の歩幅で歩くんだよ。離れたらダメだからね。」
どういう意味…
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