鋭い抱擁

私と陽は同じトンカツ定食を手に、一番後ろの席についた。

「真美はたくさん食べないと。残したらダメだからね。」

そうは言われても、陽も十分細い。説得力がなさすぎておかしかった。

「お互い様だよ。」

「えー?俺は大食いだよ。食べても太らないんだ。」

嘘だと言い返そうとすると、陽はご飯を口いっぱい頬張って笑って見せた。

あまりにも無邪気で、あまりにも自然で、敵わないなと思った。



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