鋭い抱擁
「おいしいね。」
私も食欲がわいてきて、勢い良くトンカツを頬張る。
「やっぱり真美はそうでなくちゃ。」
"やっぱり真美はそうでなくちゃ"
もう忘れていた。私は"真美"に間違えられた、ただの他人なんだ。
私は陽とは初対面だし、どんな人なのかちゃんと掴めていない。
でも陽は私を真美と呼ぶし、どんな人かもわかっているみたいだけど、それは"私"じゃない。
顔が似ていたのか何が似ていたのか、ただ単に勘違いされている。
急に情けなく思えてくる。だって私は誰かに間違えられでもしないと、人に親しくしてもらえない。
私はつまらない人間だし、寂しい人間。
こんなネガティブ思考を打ち消すように、無我夢中でトンカツ定食を完食した。
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