小悪魔れんあい
「あっ、そうそう!」
帰り道を歩いていると、叫心は思い付いたようにあたしを見た。
「なに~?」
「俺ん家来たら…ぜってぇ笑うなよ?!」
真剣な表情をして、真剣にそう言う叫心。
…変なの。
笑うなって…別に叫心の家が変なわけでもないのに。
「いや、変な事言ってるよな?分かってるんだ。でも笑うなよ?」
念を押す叫心。
「…は、はい」
そんな真剣な叫心に何故かあたしも真剣な返答をしてしまう。
「約束なっ!」
叫心はやっと笑顔を見せてくれた。
その叫心の笑顔に、あたしの心はギュッと何かに締め付けられた。
同時に再びあの罪悪感があたしを襲う。
…暁羅との事…
やっぱり話さなきゃダメなのかな…。
でも話したとこで…叫心からの答えは分かってる。
嫌われるに違いない。
だって、彼氏じゃない人と不本意だったけど
一瞬でも抱き合ったんだから。
…言いたい。
だって叫心にだけは嘘をつきたくないの。
でも、言いたくない。
だって…
それ以上に叫心に嫌われたくないんだもん…。
「麗奈?」
あれこれ考えているうちに、叫心があたしに話しかけていた。
「わぁっ…、ごめん!!考え事してた…」
「考え事?珍しいな!」
「むぅっ!あたしだって、考える事くらいあるんですっ!」
フンっと、怒ったようにソッポを向くと叫心は困ったように笑った。
「ごめんって!…でも!!…何かあったらちゃんと俺に言う事!…いいな?」
頭を撫でながら叫心はそう言う。
その瞬間、涙が出そうになった。
あたし、失いたくないよ?
…叫心を…
絶対に手離したくないよ…!!
あたしは溢れ出そうになる涙を堪えながら
「分かってるよっ?」
叫心に出来るだけ笑顔を作ってそう言った。