小悪魔れんあい
放課後。


今日もいつも通り、部活が始まる。
だけど、やけに今日の部活は静かだ。

まるで、津波が来る前の海の静けさ…といったような。


「叫心っ…!何か気味悪いな。今日の空」

雄大がボールと弄びながら、俺の元へやってきた。

雄大の言うとおり。
本当に今日の空模様は気味が悪い。


「……ヤな予感がする…」

「あ、それ俺も思ってた!」

"いや、俺は関係ないかもだけどさー"と雄大は笑って冗談を飛ばすのだけど。

間違ってはないと思う。だって、こんなにも気味が悪い日は初めてだ。


「ごめんっ…俺ちょっと…」

「おおっ…!」


俺はもうじっとしていられなくなり、慌てて今日も麗奈がいるはずのあの空き教室へと走って向かった。 


空き教室へと向かっていると、段々とその教室が見えてき始めた。

そして、電気がついてることに安心する。麗奈、いるのかな…、と嬉しくなる。

だけど、いつもと違ったのは。
一人でいるはずの教室から、二人の声が聞こえてくること。それも、一つは男の声。麗奈の親友の松本の声じゃない。


「…やっぱやり直そうぜ、俺ら」

「え?!」


再び聞こえてきたその声は。やっぱり、あいつ…暁羅の声だった。
突然の暁羅の提案に、麗奈は驚いている様子だ。

俺は入るに入れず、その会話をただ立ち尽くして聞いているだけだった。


「やっぱ俺、麗奈じゃねぇとダメみたい」

「ふ、ふざけないでよ…!あの時暁羅は浮気ばっかりだったくせに、今更…」

「わかってる。すげー無理な願いだってわかってる。…でも…俺だって想いは叫心と一緒なんだ。麗奈が好きなんだ…!」


想いは俺と同じ。そう暁羅の口から聞こえたことに、俺はショックを受けた。

コイツ、本気だったんだ。前も、今もずっと…!
麗奈を本気で、好きだったんだ…!




「…何もかも……めちゃくちゃに潰してやる…!!」


暁羅のその言葉は合図のように。
急に教室内は静まり返って、ガタンっという机の動く音がした。



俺は、咄嗟に教室の中へと入ると。
そこには、無理矢理暁羅に唇を奪われている麗奈の姿があった。


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