小悪魔れんあい
「…何って…、キス?」
暁羅は"ハハッ"と笑ってそう言った。
「…んだと?!」
その暁羅の態度に俺はさらに怒りを増す。
「好きな女にキスして何が悪いんだよ?」
暁羅のその言葉からは全く反省の色が見られない。
麗奈は、一生懸命口を制服の裾でふき取るかのように擦っている。
「だいたい、彼女を教室に一人にさせないだろ?叫心ってホント馬鹿」
"クク"っとまた喉で笑う暁羅。
「ちょっと!!教室で待ってるのはあたしが勝手にしてるんだから…「いいんだ、麗奈」」
暁羅の言葉に反応した麗奈を、俺は自分の言葉で遮る。
ああ、暁羅はきっとこのことを言ってたのか。
俺が、悪いんだ…全て。
嫌な予感がしときながらも、麗奈を一人にした俺が全部悪いんだ。
「麗奈、こっち来いよ」
俺は、いつもより強い口調で麗奈を引き寄せる。
「何だよ、女だけ連れて逃げるのか……」
暁羅のその言葉に、俺の血管はもう耐え切れず。ブチっと切れた。
ガッシャーン…!ドカッ!
俺は暁羅に向け、自分の周りにあった机や椅子を蹴り倒した。
そして見事その一つが暁羅の体に命中。
机という大きな物が当たった事から、暁羅はかなり痛そうだった。
だけど、俺が殴らないだけマシだと思え。ほんとは、こんなんじゃ全然気がおさまらない。
もっと顔が原型をなくすまで、殴り倒してやりたい。
だけど、麗奈がここにいる以上…そんな姿を見せたくない。
「叫心…?」
麗奈はいつもと明らかに様子が違う俺が怖くなったのか。俺の服の裾を掴んだ。
だけど、俺はその服の裾を掴んだ麗奈の手をさらに強い力で握り締めた。
そして、暁羅に一歩近付いた。
「…麗奈がここに居なかったら、俺はお前を殺してる…っ!!!」
俺は暁羅に向かってそう叫ぶと、すぐさま麗奈の手を引っ張り教室を飛び出した。
教室を出たすぐ後に、中から
"ガンッ!!"
と机を蹴るような音が聞こえた。