小悪魔れんあい


翌日。

「よぉ、叫心。ちょっと面貸せよ」


教室で俺と雄大が喋っていると、案の定暁羅が昨日と同じ余裕の笑みで俺にそう話しかけてきた。

「…あぁ」

返事をしながら、俺は内心やっぱり…と感じた。


「おいおい…二人とも何かあったのかよ?」

俺らを心配してくれる雄大に俺は心の中で感謝し「大丈夫だって」と告げ、暁羅に着いて行った。

暁羅は俺の少し前を歩き、教室を出てからは無言のまま。俺も話す気なんて更々ない。

昨日の今日だ。
実際今だって、殴り飛ばしたくて堪らない。今この瞬間も、麗奈の泣き顔が頭に浮かぶ。



「…叫心」

暁羅は人気の無い場所で立ち止まって、振り返った。


「…」

俺は言葉を返さず、ただ暁羅を見つめる。


「昨日は悪かったよ。ごめん」

「…?」

急に謝る暁羅に、俺は瞬間的におかしい…と感じた。
本当に謝罪する気があるのならば、この余裕ぶった笑みは何だ?


「それで、本題は何だよ」

「あ、やっぱりわかってた?」

暁羅はまた笑って、舌を出す。


「良いから、早く言えよ」

俺がそう促すと、暁羅は軽く咳払いをして


「勝負、しようぜ?」


そう俺に挑発した。


「…勝負?」

そんな事だろうと思った。暁羅が簡単に引き下がるわけじゃないとはわかっていた。

かと言って、麗奈は物じゃない。
勝負なんかであげたりもらったりするもんじゃない。そうわかっていても、どうやら暁羅は全く麗奈を諦めるつもりがないようだ。


「その勝負なんだけど…バスケ1on1でどお?」

「…良いけど」

「後で変更は受け付けないからな」

「わかってるよ。負けないし」

「…変な自信はやめろよ。俺のバスケの実力は知ってるだろ?」


「要は勝てば良いんだろ?」


俺のその言葉に暁羅は押し黙った。


「勝てるもんならな」

「…そのかわり…」


俺は暁羅を真っ直ぐに見据えて




「俺が勝ったら麗奈は諦めろよな?」


それだけ言うと、暁羅が何か言葉を返す前にその場を立ち去った。


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