小悪魔れんあい




「試合を中止してくれ!?」



試合を明日に控えて、今日もラブラブなあたし達の間に叫心の大きく叫ぶ声が屋上に響き渡る。



「…また何で?」


口に含んだ食べ物が出そうになるのを抑えながら叫心はあたしに聞く。

「…やっぱりおかしいよ!あたしのために試合するなんて…。あたし、暁羅に直接やめるように言うから…」


叫心と暁羅が試合することになってから、よく考えた。そしたら、やっぱりあたしが全部悪い…としか思えないから。なのに、叫心に迷惑かけてまで戦ってもらうなんて…、出来ない。

そう思ったから、試合中止を提案した。


「何それ」



だけど、あたしが言い終わるのと同時に聞こえた叫心の声。その声は低く、暗く…まるで怒っているかのような。



…ううん、怒ってる。



「え…だから…」

「不安なんだろ?バスケじゃ俺が負けるって」

「ち、違うの!あのね、聞い…「何が違うんだよ!!」」



叫心の声が再び屋上に響き渡る。…怒ってるんだ。




「何だよ…。俺マジで信用ねぇな」

「ちがっ…!!そういう意味じゃないの!」


叫心、勘違いしてる。あたしはそんなつもりじゃ…!
だけど、今更何を言ってもあたしの気持ちは伝わるわけがなく。



「それにお前は平気なのかよ?」

「…え?」



叫心は髪をクシャっとさせながら、あたしの方を向く。


「…お前を襲った暁羅の元に、お前はまた近付けるのかよ…?」




叫心のその言葉を聞いた瞬間、あの日の暁羅とのあの場面を思い出す。


忘れたわけじゃない。忘れたフリをしていただけ。



「結局、本当は暁羅が良いんじゃねぇの?」


「…叫、…心?」


叫心は静かにお弁当を直すとゆっくりと立ち上がった。



「…とりあえず。お前は簡単に暁羅には渡さない。試合も予定通りする!」




いつもより冷たくあたしにそう言い放って、静かに屋上から出て行った。



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