小悪魔れんあい
「麗奈ちゃん、…大丈夫?」
長塚さんに心配され、そう言われたのは教室に戻っている最中の、廊下だった。
「大丈夫って…?」
「あ、いや…真実ちゃんのこと…なんだけどさ」
バツが悪そうに話す長塚さん。
でも、ちょっとだけ嬉しい。こうやって、誰かに心配してもらえると、気持ちがすごく楽になる。
「大丈夫だよ~、何にも気にしてないし」
「でも、顔はそんな顔してないよ?」
「って、あたしが言えた立場じゃないよね…」と苦笑しつつ、あたしに話す長塚さん。
きっと、あのときのことを言ってるんだろうな。長塚さんが叫心のことを好きだった時のことを。
「全然平気だから!心配してもらえただけで嬉しいもん!」
「とりあえず…、あんまり強がっちゃ…ダメだからね!」
長塚さんの言葉に、あたしは力強く頷く。
大丈夫だもん。
たとえ、何かが起こったとしても。
すぐ叫心に言うって、約束してるもん。
それは、前から二人で決めてた約束だもん。
叫心なら、何があったって…守ってくれるよね?
「あとさ。真実ちゃんさ…サッカー部に正式に入部するみたい…」
「本当…に?」
そう聞き返すと、長塚さんは少し顔を引きつらせながら笑って頷いた。
もしかしたら、…とは思っていたけど、まさか本当に入部するなんて。
だって女の子だよ?
サッカー部には、男の子しか入れないのに。どうしてワザワザ入部するのが、叫心のいるサッカー部なの?
だけど、上手だもんね。その実力は、本当のものなんだもんね。
これから予選大会まで忙しくなる。
何も出来ないあたしは、やっぱり邪魔に…なるのかな。