小悪魔れんあい
「きょう…しん、大丈夫?」
「っ!」
麗奈の声で俺はハッと我に返った。
「今週予選があるって言ったじゃん?」
「うん」
「…その試合にさ、真実も出るんだ」
「…えっ…?」
あふれ出そうになる涙を俺は必死に堪えながらそう零すと、途端に麗奈の表情は凍りついた。
「ま、みさん…?」
「…あぁ。なんかあいつがワガママ言ってさ…反対したんだけど、無理みたいで…」
「そ、なんだ…」
気のせいか、麗奈の肩がカタカタと震えだした。
そして、目は泳ぎ、俺を直視しない。
「麗奈?」
「叫心、叫心…!」
やっと俺を見てくれたかと思うと、麗奈はガシっと俺の手を握った。
「あたしは、叫心の、彼女…?」
「あ、当たり前だろ?な、何言ってんだよ…」
「きょ…!」
どうやら俺は自分のことばかりで、麗奈のことを何もわかってやれてなかったらしい。
きっと最近の真実のことで相当キてた…みたいだ。
俺と真実が付き合ってる、なんていうウワサも最近じゃ出回っているらしいし、不安になっていたのだろう。
じゃなきゃ、いつもあんな元気な麗奈が俺にこんなこと聞くなんて、どーかしてる。おかしいに決まってる。
「ごめ…、あたしっ…」
まだ肩をふるわせ、その大きな瞳に涙を浮かばせ始めた麗奈。ああ、もうこんな姿…黙ってみてられない。
「麗奈っ…」
俺は堪らず、麗奈を抱きしめた。