小悪魔れんあい
あー、もう!
俺なんで自分のことなんかで悩んでたんだろ。何で俺…麗奈のことちゃんと見れてやれてなかったんだろ。
現に麗奈はこうして、突っ張ってた糸が切れたように泣いているのに。
「何で麗奈が謝るんだよ…?」
「っ、だって…叫心がせっかく悩みをあたしに…」
「…でも、麗奈を泣かせたのは俺のせいだろ?」
「…え?」
俺の腕の中から、顔を挙げてゆっくり上目遣いで俺を見つめる麗奈。
「俺が真実の名前を出したから、麗奈はこんなにも傷ついたんだろ?」
「……っ、でも…叫心を信じてないのは…あたしだしっ…」
「不安にさせたのは俺だろ。俺が悪いの」
「っ、でもっ……」
まだ何か言おうとする、麗奈の口を俺は自身の口で塞いだ。
久々に触れる麗奈の唇。その感触はいつも通りのあの暖かさといい香りに包まれている。
キスしているその瞬間だけは、もう時を忘れて無我夢中になってしまう。
ちゅ…と、まだ名残惜しく離れようとしない唇と唇を俺はゆっくりと離していく。
「ごめんな、もう言わない。あいつの名前出さないから」
「……ほんと…に?」
「ああ、約束」
そう言って俺は小指を差し出す。
すると、麗奈は涙を拭って俺の小指に麗奈の小指を絡ませる。
それと同時に俺は、自分の心とも約束した。
もう麗奈を不安にさせない、いつも側に。できるだけ、ずっと。
そう誓った。