小悪魔れんあい



名残惜しく麗奈と別れてから、俺はグランドへと向かう。すると、楽しそうにはしゃぐ真実の声が聞こえてくる。


その声と、さっきの麗奈の正反対の泣き声が重なる。


グッと、悔しい思いを心にとどめながら俺は駆け足でそちらへ向かう。


「お、叫心!トイレか?遅かったじゃねぇか」

「あ、ごめん。ちょっと…さ」

「そか!ま、無事なら雄大ちゃんは安心です!」


なんて雄大と冗談を交し合いながら俺は練習に戻る。

すると、ポンと後ろから肩を叩かれた。


「…真実…」


振り返ると、後ろには不機嫌そうな顔をして俺を見つめる真実の姿が。


「叫心から、メスのニオイがする…」

「は?、何言ってんだよ…」


俺はもー…という風に戸惑いを隠しながらボールで遊ぶ。すると、真実はさらに怒って俺の腕をガシっと掴んで離さない。


「叫心!会ってたでしょ!」

「おい、真実…!」


後ろから雄大が、真実を落ち着かせようと腕を引っ張る。だけど、一度怒り出した真実を止められる人はいない。

少なくとも、俺は見たことがない。


「ま、真実…お前何そんな怒ってんだよ…」

「うるさい!会ってたんでしょ!?」

「…会ってねぇって」

「会ってた!」



ぎゅううう…と俺の腕をさらにつよく握り締める真実。

そんなにいけないことなのか?俺と麗奈が会ってたことって。


真実がこの学校へきてから、そりゃあ…サッカー部にとっては大きな戦力が増えたかもしれない。

だけど、だけど。
言っちゃ悪いけど、何一つ。良いことなんてない。

俺と麗奈は気まずくなるし、自分自身に自信をなくすし。


何で、何で…?


そう思ったら、なんだかイライラしてきた。
無性に、真実に対して腹立たしくなってきた。


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