小悪魔れんあい
「真実、いい加減にしろよ!」
まだしつこく俺につきまとう真実がうっとおしく思えて、俺はつい声を荒げてしまった。
「きょ、叫心…?」
「お前、何なんだよ?」
「え…?」
だめだ、イライラがもう止まらない。
俺だっていろいろ我慢してきたんだ。麗奈とずっと一緒にいたい。部活までの学校生活だけでも一緒にいたい。
そう思って毎日学校へ行ってるのに。そのために学校に行ってるって言ったって、ほとんど間違いじゃない。
「俺いっぱいお前のワガママ聞いたじゃねぇかよっ…!」
「おい、叫心落ち着けって!真実だぜ!?」
雄大が俺に忠告する声も、今はもう聞こえない。きっと今聞こえてくる声があるとすればそれはもう、麗奈の声しか俺には届かないと思う。
「最初の日はお前が一人じゃ嫌っていうから弁当一緒に食べてやった…!」
「きょうし、ちょっ…!」
「部活だって見学させてやった!」
「待って、お願い…叫心っ…」
「家にも送ってやった…!」
「…っ…」
「試合にも、っ…出させてやるじゃねぇかっ!」
ぶるぶると手が震えて止まらない。
これは怒りだろうか、それとも悔しさだろうか。
どちらにしても、それらが真実に対して向けられているということは確かだ。
「もう、いいだろ?」
そうだよ、もう…いいだろ?
俺にだって、自分の守りたいものがあるんだ。誰か世話をつきっきりでしてやるほど、俺はお人よしじゃないんだ。
「叫心…?」
うるっとした瞳で俺を見つめる真実。
あー、だけど俺…おかしいかも。
だって、真実の顔がさっきの涙を流していた麗奈の顔に被るんだ。
「ごめん、真実」
俺は真実と目も合わさずに、そのまま部室へと戻った。