小悪魔れんあい
教室に着くと、まだ朝の早い時間だからなのか。
登校してきている生徒は、全くいなかった。
「あ!俺、遅刻回復に行ってくるわ」
雄大は思いついたように、鞄を机に置いて超ダッシュで下の職員室へと向かっていった。
俺は一人、教室の自分の席で座りながら窓の外の景色を眺める。
ただ無心にその景色を眺めていたいのに、思い出されるのは昨日の、高橋と佐野が二人で喋ってる風景。
何回思い出しても、腹が立つ!
いや、俺は別に高橋の彼氏とかじゃないからどうこう言える立場じゃないんだけど。
やっぱその…あれだ。
まだ仲良いのかな…とか思うと、すげー虚しくなる。
佐野ってやっぱ、背が高いし…男の俺から見てもすげー男前だと思う。
高橋が好きになるのも無理ないなって思う。
それに比べて俺は…、佐野みたく話が面白いわけでもないし、根暗だし…ただのサッカーバカだし。
とりわけ、何かすごいものがあるわけでもない。
ただ、高橋をナンパたちから助けたっていうのがあるだけ。
だけど、そんなこと誰にでも出来るわけで、別に俺じゃなくったっていいわけだ。
助けたからって、俺の好感度が上がってるとも思えないし。
かといって、俺は喋り下手だから…自分から喋りかけるのも苦手だ。
高橋から話しかけられるのを待っているだけじゃ、きっといつか誰か他の奴にとられてもおかしくないよな。
やっぱ、自分から積極的に行かないとダメだよな…。
どこを眺めていても、その俺の視線の先に映るのは高橋だけだった。