小悪魔れんあい



午後の授業も手につかないまま、放課後を迎えた。



「叫心!部活だぜー」


雄大が疲れたーと言いながら、うんと背伸びをする。

俺はまだ頭からあの悩みが離れていないままだが、これ以上気にしていてもしょうがないので部活に行く準備をはじめる。


「あれ、真実は?」

「おー。真実なんか今日は休むみたいだぜ」

「休む!?」

「うん。なんかルンルンで帰ってたな。デートか?」


いや、そうじゃないだろ!と雄大に突っ込みたいのをあえて我慢して、俺は席から立ち上がる。


「ルンルンで帰っていったって…」


真実の言葉、真実の行動。全て都合がよすぎると思わないか。


もちろん、俺の勘違いであってほしいのだけれど。きっと現実はそう上手くはいかない。



「叫心?ぼーっとしてんなよ?」

「あ、ごめん…」

ハッと我に返る。

雄大が早く部活に行こうぜと俺を促し、俺はそのまま何も言うことなく部活へと向かった。




部室に着いて、着替えを始めながら俺は窓から外を見つめる。



段々暗くなっていく空。
茜色に空が染まっていき、生徒達の帰る声が聞こえてくる。


と同時に、俺の心臓の音が大きく高鳴っていく。




ドクン…ドクン…と。




っ、だめだ!じっとしていられない。


「雄大、ごめん!先部活始めといて!」




俺は驚く雄大にそれだけ伝えて部室を飛び出した。


< 203 / 231 >

この作品をシェア

pagetop