小悪魔れんあい



あたしは愛にも言ったとおり、放課後の誰もいない教室で窓から部活をする叫心を眺めていた。


不意に視界に入る、いつもあたしがグランドで応援していた場所。

いつもなら、あたしが座ってた場所なのに。今は、誰も座っていない。


サッカー部はもうすぐ予選大会を控えているからなのか、すごく練習に気合いが入ってる。

いつもより大きい声をだして。

いつもよりたくさん走って。


緊張感で溢れてる。



そして眺めていれば自然をあたしの視線は叫心へと向かっていく。

大好きで、大好きで。もうどうしようもない叫心が。こんなにも遠くに感じるなんて。


そう思うと、あたしの胸はキリキリと痛み始める。


真実さんとは楽しそうにしゃべってるのに、あたしとはもう話してくれないのかな。


もし、そうなら。
もう叫心と話すこともできなくなったなら、前に戻りたいよ。

叫心に片思いだったあの頃に、戻りたい。


強く、そう思うよ。



ポロ…と、再び涙は溢れ始める。もうとめる力さえあたしの中には残っていないのかもしれない。


「帰ろうかな」


そう思い、席から立ち上がったとき。



「おいおい、追っかけ健在かよ?」



意地悪く笑う声が聞こえた。



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