小悪魔れんあい
「笹岡君」
「!」
突然聞こえた声に、俺はドキーっとして妄想の世界から戻ってきた。
「…!、長塚?」
「あ、朝練お疲れ様!」
そこにいたのは、サッカー部のマネージャーでもある長塚 理恵。
顔も可愛くて、性格もよく気が利くため、サッカー部員からはかなり人気のあるマネ。
まぁ、俺もよく周りが見えてかなり仕事ができるからすごいな…とは思っていたけど。
「お疲れ、何?どしたの?」
長塚は、ポッと頬を紅く染めながら、教室の中に緊張した様子で入ってきた。
「あ、あのね!なんか、今日は顧問の先生が出張になっちゃったらしくて…部活休みになったの」
「あ、そうなんだ!それをわざわざ?」
「うん。言うの遅れてごめんね!」
「いや、全然!むしろ、助かった」
「ほんと?…よかった」
胸を抑えながら、ほっと安堵のため息をつく長塚。
なんか、女の子らしいなぁって思う。
だけど、こういうとき高橋ならなんて答えるかな…とか考えてしまうのが、俺のバカなとこ。
ヘタレなくせして、妄想力だけはばっちりあるってどうなの?
やっぱ、キモイでしょ。
「…笹岡君?」
「あ、と!ごめん、ボーっとしてた!」
俺は、またまた妄想の世界から長塚の声で引き戻され、恥ずかしさのあまり少し顔を覆いながら、ごまかした。