小悪魔れんあい



その声に驚いて、あたしは振り返ってみると、そこにいたのは暁羅だった。


「あ、きら!」

「…よっ!」


前も話したからとはいえ、やっぱりまだ気まずいのは残ってる。暁羅もそれを感じたのか、すこし苦笑いで教室に入ってくる。


「まだ教室開いてたからさ。まさかなー…とは思ってたけど」

「そのまさか?」

「おう」


クスクス笑う暁羅。
そういえば、今日は必ずいるといっていいほど一緒にいる女の子がいない。


「あれ、今日はフリー?」

「ばーか、最近ずっとフリーなんだよ」

「えぇ?何があったの?」


暁羅の驚く事実に、あたしは失礼ながらも思わず聞き返してしまった。


「何がって…、俺だって元は純粋だったんだからなー」

「……うそー」

「ウソじゃねぇって」


怪訝な顔であたしが尋ねると、暁羅はまた苦笑いを零した。


「遊んでたのも事実だけどさ。俺は麗奈にヤキモチ妬かせたい一心で遊んでた…だけだからさ」

「!」


突然真剣な表情で、外を見つめながらそう呟く暁羅。


反則だ。いまさらそんなことを言うのも反則だけど、今こんな状況で。あたしが叫心と別れたあとでそんなことを言うなんて、反則過ぎる。



「って、今更叫心から麗奈を取り戻そうとか、考えてねぇけどなっ!」


と、またいつものような元気のある笑顔に戻る暁羅。


キュンとときめいたり。


ズキンと胸が痛んだり。


そのたびに、あたしは思う。暁羅と付き合ってるときに戻れたらなって。



そして、さらに。
叫心に、会いたいなって。



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