小悪魔れんあい


「あきっ…ら?」


以前抱きしめられたときの、あの強引な暁羅じゃない。

あの時なんかよりもはるかに優しくて、暖かくて安心を与えてくれる暁羅の温もり。



「麗奈、泣いてる」

「っ!」


暁羅にそういわれた途端、ボロっと零れはじめる大量の涙。だからなのか、暁羅が抱きしめてくれたのは。


慰めてくれてるんだね。


「ごめんな、俺…無神経なこと言って」

「…いいの、あたしが言ってなかったんだから…」


そういうと、暁羅はさらに強い力で抱きしめてくれた。


「…辛かった…ろ?」

「別れたときは、もう死にそうだった…」

「良かった。麗奈生きてて」


プッと笑って、あたしからゆっくり離れる暁羅。そして、上から優しく見下ろして笑いかけてくれた。


「叫心から言われたの?」

「…うん。いきなり…」

「そか。…なんでとか…聞いた?」

「…」


あたしが首を横に振ると、暁羅はうーんと頭を抱えて悩む。


「麗奈はこんなにもパーフェクトな女の子なのになー」

「暁羅、お世辞ばっかり」

「俺の得意技だからさ!」


暁羅はあたしを元気付けようとしてくれているに違いない。一生懸命あたしの目線にあわせて、冗談を交えながら話してくれる。



こういうところ、本当に変わってないなって思う。昔から、暁羅は女の子の異変にはすぐ気付いて、すぐ励ましたり、助けたりとすごく気の利く人だったから。



そういうところは変わってなくて、ほっと安心する自分がいた。



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