小悪魔れんあい
暁羅が冗談ばかり言ってくれたおかげで、あたしの涙は止まりそうだった。
だけど、神様はあたしにとことん意地悪をしたいらしくて。そう簡単には泣き止ませてくれなかった。
「うーわ、もう男作ってるんだ」
「!」
背後から突然今一番聞きたくない人の声が聞こえてきた。
そう、真実さんだ。
「っ、真実さんっ…!」
「…真実?」
暁羅もその声に気付いて、声のした方へと目線を移す。
「叫心と別れてすぐとか…すっごい勇気だねー」
勝ち誇ったような笑みであたしを見つめる真実さん。その言葉一つ一つが、すごくイライラする。
と同時に、胸を激しく締め付ける。
「おい、お前勝手なこと言うなよ!」
「なに、あんた」
暁羅の言葉にカチンときたのか、真実さんはものすごく機嫌が悪そうに眉にシワを寄せる。
「俺と麗奈は付き合ってねぇ!」
「でもどうせ、これから付き合うんでしょ?」
「麗奈はそんなにすぐ切り替えれるほど、軽い女じゃねぇんだよ!」
あたしをフォローしてくれる暁羅。
この存在がどれほど、あたしにとって必要だっただろうか。
ごめんとか、そんな同情の言葉なんていらないの。あたしは、ただ一人じゃないよって。そう言ってほしかっただけなの。
絶対一人にしないから、って。叫心に一言でもいいから、そう言ってほしかった。
「あんた何様?このあたしに…!」
と、真実さんが何かを言いそうになったときだった。
「ほっとけ、真実」
真実さんの背後から、声がした。
聞きたかった、けど。この状況では絶対に聞きたくなかった、彼の声が。