小悪魔れんあい



「きょう…し…ん…」


後ろから現れたのは、紛れもなく叫心。本物の叫心だった。

ただいつもと違うところは、あたしを見る瞳が冷たく鋭いということ。


他人を見るような目つき。

「ほっとけって…叫心!この女に叫心は遊ばれてたんだよ!?」

「いいんだ、分かってたから」


え?

叫心、今…なんて言ったの?

叫心の言葉にあたしだけでなく、暁羅も驚いたのか叫心をじっと見つめている。


「真実、麗奈は有名なんだ。軽い女っていうので」

「…やっぱり?初めて見たときからそう思ってた~」


叫心の言葉がすごく嬉しかったのだろうか、真実さんの笑みは満面の笑みに変わっている。



泣きそうだ。ううん、それ以前にもう泣いてしまっているのだけれど。


でも、ヒドイ。酷すぎる。いくらそう思われていたからって、あの時。あたしと叫心が付き合ってたあの時は。


叫心、そんなこと絶対に言わなかった。
いや、あたしが叫心に片思いだったころも、そんな風にあたしを見ないでいてくれたのは、叫心だったのに。


今になって、こんなこというなんて。
やっぱり、あたしのことを嫌いになったんだ。もう大嫌いで憎いから、そう言うんだね?




「叫心、てめぇっ…!」

「俺は思ったことを言ったまで。だから、暁羅も俺らにつっかかんな」

「っ…!」

「あ、暁羅!」


叫心の言い方にイラっときたのか、暁羅は殴りかかろうとした。でも、それをあたしが咄嗟に引き止めた。


「れ、麗奈!?」

「いいの、もう…いいから…!」

「……」


まだ納得がいかないようだけど、暁羅は上げていた拳を下ろして引き下がった。



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