小悪魔れんあい


「叫心」


震える体からは、震えた声しか出ない。だけど。そんな声だけど、あたしは必死に叫心へ伝える。

そんなあたしを叫心は、まっすぐに。だけど、冷たい眼差しで見つめる。


「いろいろ、迷惑かけた…よね。ごめんね」

「…」

「もう、関わらないから…」


これがあたしなりのケジメ。
これ以上言葉を発したら、もう壊れそうで。自分が自分でなくなりそうで恐い。

だから、この言葉で。精一杯あたしの気持ちを伝えたつもりだよ。


大好きだから。ずっと、好きでいたいから。もうあたしは関わらないの。



叫心に嫌われるようなことは、したくないの。




「ふん。強がり言っちゃってさ!叫心、行こう!」

「…おう」



スタスタ歩いていく真実さんを追うように叫心は、歩いていく。


だけど、教室を出る直前にその進む足をピタっと止めた。

そして、あたしの方を向いて。



「麗奈は、絶対幸せに…なれる」



それだけ呟いて、教室から静かに立ち去った。





「おい、麗奈っ…今叫心…」


暁羅がびっくりしたようにあたしを見るけれど、もう限界。何も頭に入ってこない。


もう、ずるい。ずるすぎる。叫心は、どうして冷たくしといて、最後はあんなにも優しいの?


ありえないのに。
絶対にありえないのに。



叫心がいないのに、あたしに幸せが訪れるなんて。




絶対にありえないのに…!


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