小悪魔れんあい
「何で笹岡も麗奈みたいな女、助けたんだろ…」
"ある場所"へと向かってる最中に愛はため息を吐きながら、何回もそう呟く。
「きっと叫心は、あたしのことが好きだったんだよ!」
「自意識過剰もほどほどに!」
「違うもん!絶対そうだもん!叫心は、照れてるだけだもん」
元はといえば、愛が悪いんだもん。…って、それは結構本人も気にしてるから、言わないんだけどね。
二人で遊びに行くときに公園で待ち合わせして、たまたまあたしが先に着いて、愛を待ってるときだった。
数人の、派手な身なりをした男たちが絡んできたんだ。
もちろん、全員知ってる人のわけがなかったからすぐさま逃げようと思ってたんだけど、そこで愛と待ち合わせしてたのもあって、逃げるに逃げられなかったんだ。
携帯を取り出したら、「アドレス教えてよ」ってしつこく聞かれて、ずっと断ってたんだけどそのしつこさが段々激しくなってきたから、もう待ち合わせとか関係なく逃げてしまおうって思ったんだ。
で、一人の男があたしの腕を掴んで、どっかに連れて行こうとしたその時に、叫心の声が聞こえたんだ。
「やめろよ」…って。
あたしは一瞬誰の声か、全く分からなかったから全然知らない人が助けてくれたんだって思ってた。
だけど、少し開いた目から見えたのはあたしと同じ制服。
同じ学年カラー。
どこかで見たことがある、後姿。
笹岡君だって、気付いたときはほんとにびっくりしたんだ。