小悪魔れんあい



7組…6組…5組…。
ともう少しで高橋のクラスに到着しそうなときだった。


ババっと、急に教室から飛び出してきた高橋に、俺はびくっと反応してしまった。


「きょ、叫心っ…!」


そう言って、俺の顔を驚きながら見つめる高橋。
その表情はどこか曇っている。



だけど、精一杯俺に笑顔を向けてくる高橋に、俺は明らかにいつもと様子が違うな…とうすうす感づき始めた。


なんかこう…スキンシップが少ない。
って、いやいや!俺、変態みたいなオーラが出てますけど、断じて違いますから!


ただ、いつもあることがないと寂しく感じてしまうときってあるだろ?

例えば、いつもいた場所に今日はいなかった。
そんな感じ。


そしたら、やっぱり寂しく感じてしまう。少なくとも、俺はそうだ。



まずは、昨日なんで会いにきてたのかってことを聞きたいのと、何で話しかけなかったんだってことを俺は聞きたかったのだけれど。


どうも、かなり俺を見て怯えている様子。
もしかして、俺…今日一段と恐ろしい顔してるとか!?



待てよー!そんなこと、あるわきゃねぇだろ!
高橋に会う時の俺って、いつも輝いてるはずだって!怒った顔をしてることは、まずない!…であってほしい。



だけど、俺は必要以上に今日の高橋の様子について聞き出そうとすると。


高橋は、俺を避けるかのように笑ってそのままどこかへ走り去っていった。


そして、たくさんの意味深な言葉を残していった。





"叫心の好きな人って長塚さん…?"


"昨日見ちゃったんだぁ…"


"もう、邪魔しないから…"




俺の話を何も聞かずに去っていった高橋。
俺は、…どうすればいいんだ?

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