小悪魔れんあい
そしていつもと違った高橋。
いつもみたいな元気な笑顔で笑わない。

あいつの笑顔はどこか沈んでいて、無理矢理作ったような笑顔だった。





そして、何であんな質問をされたのか分からない。

俺が答えると、お前はまたあの力ない笑顔で笑う。
でも、俺の全ての答えを、あいつは聞こうともしなかった。


そして、最初の言葉。


"昨日見ちゃったんだぁ…"

もしかして…


俺の中で嫌な場面が脳裏に浮かんだ。


"長塚さんと叫心が抱き合ってるところ…"


俺は嫌な場面を、好きな女に見られたという焦りと恥ずかしさで、慌ててしまった。

だけど、そんな俺をあいつは何かをこらえるような瞳で見据えてきた。


泣きそうな…
いや、多分泣いていた。



きっと、ただ事じゃない。
そう思って俺は昨日告白された事。

断った事





全部言おうと思った。



誤解されたくない、あれは突然の出来事だったんだ……と。





だけど、あいつは俺の返答を聞かないまま、俺の目の前から去って行ってしまったんだ。



そして、意味深な言葉を残して…








「邪魔しないから…?」




それは一体何を意味してる?



言葉が理解出来ない。








いや、俺が理解したくないんだ。


心のどこかで、その言葉の意味がわかっているから…。



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