小悪魔れんあい
高橋を探しに出てから数分。
見つからないな、と思っていれば人気のないある廊下の隅に、いた。


しかも、高橋と長塚が。


遠くから見ても、十分分かるくらい二人は言い争っていた。

どちらかといえば、長塚が激しく荒々しい口調で喋っていた。


高橋の足元にはたくさんの教科書が散らばっており、それが長塚に投げつけられたのだと、一目瞭然だ。



段々と高橋に近づいていく長塚。
そして、手を挙げた。


俺の身体は、それを見た瞬間。もう本能に任せて動いた。







……パアンッ!



廊下中に平手打ちの音が響き渡る。



い、いってぇ…!
と、俺は歯を食いしばるけれどただ思うことは一つ。


高橋守れて、よかった。
間に合って、よかった。



「きょ…、しんっ!」


後ろから、高橋の少し驚いたような声が聞こえてくる。

俺は、ただじっと長塚を見詰める。
もちろん長塚は、まさか俺が現れると思っていなかったんだろうな。ものすごく目を見開きながら俺を見ている。


俺は、まず高橋にいわなきゃいけない言葉があったから。

後ろにゆっくり振り返る。
そして、掠れた声で呟く。


「…ごめんな…?」


高橋は、途端にその大きな瞳に涙を浮かべながら俺を見つめる。

あぁ、辛かったんだな。しんどかったんだな。俺のために我慢してくれたんだ…と思うと、俺も余計辛くなった。


「きょ…「笹岡君!!」」



高橋が何か言おうとした言葉を、長塚が遮った。

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