僕らの

｢…遊ぶって何して？｣
｢………｣
さっきからずっとこの問答を繰り返しているが、一向に答えは返ってこない。
僕の隣で五月蝿くまとわりついてくるのはショートカットの少女−科基正生<ｼﾅﾓﾄ ｼｮｳﾊ>。
彼女は僕が高校に入ってから最初に出来た知人で、暇さえあれば僕にこうしてへばりついてくる。
｢あのさぁ、一応聞くんだけど、今の季節言ってみて｣
そう質問すると、彼女は1度僕から離れて、にっこりと満面の笑みを浮かべて、
｢夏ーーー!!｣
と勢い良く僕に再び抱きつこうとしてきた。
そんな彼女の額に手を押し付けて、どうにか距離を取り、
｢分かってんならさぁ、抱きついてくるなよ。暑苦しい｣
そう言って彼女に｢離れろ｣と言い放ったところで、
｢おーおーそれは冷たいんじゃないの？陵崎幸喜<ﾘｮｳｻﾞｷ ｺｳｷ>ｸ〜ﾝ｣
と明らかに人のことを逆撫でする喋り方の男子生徒数名の中の1人がﾆﾔﾆﾔと気色の悪い笑みを浮かべながらこちらにやってきていた。
｢…誰？｣
僕は彼にそう問うた。
｢誰って。まさかお前、俺のこと知らねーのか？｣
と、まるで自分が有名人であるかのようにそう発言した彼は、
｢いいか？1度しか言わねぇからよく聞くんだぞ？｣
とありきたりな台詞を吐いて、僕に自己紹介をしようと口を開けた。
だが、その答えを声にして発したのは、彼ではなく、僕の隣で彼を睨んでいた正生だった。
｢誰って……アタシのストーカーじゃん｣