Sorcery Game
崩れた日常
カリカリカリカリ…
静かな教室に、シャープペンシルで文字を書く音だけが走り回る。
俺、吉良雅也は今、テストの真っ最中だ。
大好きなバスケを一週間もやらず、同じバスケ部の安藤力哉、新田進と勉強漬けをした甲斐あり、俺にしてはよく解けている。
まぁ、勉強しようなんて言いだしたのは力哉で、俺と進はバスケしたかったんだけどな…
俺は、斜め右にいる坊主頭の末石龍二が、ホームルーム委員の一ノ瀬紘佑の答案を盗み見ようとしているのを目の端に捕らえた。
あいつバカだな…
クラスのムードメーカーの龍二は、クラス最下位の頭脳の持ち主だ。
一方紘佑は、派手な金髪で一見不良だが、真面目で友達思いの良い奴だ。
だから、カンニングなんて絶対にさせないだろう。
あ、俺達の高校は、各クラス一クラスというありえない編成で、基本的に地元の中学生はここに来る。
カランという軽い音が、シャープペンシルの音しかなかった教室に新たな音を作り出した。
俺の隣で、親友の木原俊がシャープペンシルを落としたんだ。
試験監督の先生が、ゆっくりと歩み寄り、シャープペンシルを拾うために腰を落とす。
その一瞬で、俺の背後の今村利輝が、俊の答案を盗み見たのを、俺は見逃さなかった。