さくらんぼ、ひとつ。
ガラ・・

あたしは息を整えると、

ゆっくりと教室のドアを開けた。

もうすでにみんなは

それぞれの席に座っていた。

あたしは急いで自分の席についた。

「バテちゃった?」

椅子に腰を下ろすと、

逆隣の山本くんが

意地悪そうに微笑んで言った。

「バテてないよっ

運動部をなめちゃだめだからね?」

「はいはい!」

山本くんは満面の笑みを浮かべた。

・・・どきっ

あ~だめだあたし!!

笑顔にだまされちゃダメ!!

いけない、いけない!!

でもな、山本くんは

あたしの理想と

ピッタリだったりするんだよな

背が高くて、走るの速くて、

ちょっと意地悪なとことか・・

でも違う!好きじゃない!

うん。好きじゃない!!

あたしは自分にそう言い聞かせた。

知り合って2日目だもん。

ほら、山本くんにも裏があるかもしれないし・・・!

あたしは気を紛らわそうと、

机の中から文庫本を取り出した。

本を買ったときについてきた、

きれいな桜色のしおりをはずして

あたしは本を読み始めた。

『こんなに君のことが愛しい。

これって恋なのかな?』

その1フレーズを読み終わったあと、

あたしは本を勢いよく閉じた。

最近までは何気なく読んでいた本なのに

ちょっと読むだけでなんか…だめだ。

顔が熱くなってくる~っ

どうしちゃったのあたし!?
< 10 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop