さくらんぼ、ひとつ。
「よかったじゃん。

あたしも恋したいなー」

「クラス替えは出会いいっぱいだよ♪

恭子かわいいんだし大丈夫!」

「それ、結衣に言われても説得力なーい!」

「なにそれー」

あたし、高橋藍那は、

保育園以来、恋をしたことがない。

保育園のとき、大好きだったあの子とは、

毎日、毎日一緒に遊んでたな。

誰だったか、名前はよく覚えてないけど、

すごくかっこよかった。

それにしても、保育園以来、

恋をしてないなんて、おかしいのかな?

それとも、こんなに保育園のときのことを

思い出すなんて、まだ未練あり?

何年前の未練だよって話だよね。

「高橋ー!岡本ー!

体育館で集会するから戻ってこーい!」

50代後半くらいの学年主任が、

生徒玄関にいるあたし達を

体育館の窓を開けて呼んだ。

「はーい!」

あたし達は、急いで校舎内に入った。


「今日は入学式準備お疲れ様でしたー

明日からいよいよ君達は先輩です!

身を引き締めて……」

学年主任のハイテンションな声を聞きながら、

あたしは、体育館の窓の外に見える、

桜の木を眺めていた。

「新クラスですが、

2年校舎の階段に張り出した通りです。

明日は、新クラスの教室に入ってください。」

新クラス…

いい人、いたりする??

保育園の恋に未練残ってるあたしに合う人。

いるわけないか。


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